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「腰痛および上肢痛の症例にみるAMCTの一例と考察」 報告者:間渕貴裕 B.C.Sc.

マニュピレーション vol.18 No.2(2003.5)掲載

はじめに

この原稿のお話を頂いたとき、正直「開業1年目で臨床経験の浅い私なんかでいいのか?」という思いがありました。しかし、その時同時にある先生の「どんな名医も最初は新米だ」という言葉が頭に浮かびました。なるほど、これは私に対する試練でもありチャンスでもあるのではないか、と思いお話を受けさせて頂くことにしました。

私は昨年春にRMIT大学日本校を卒業し、何も分からないまま開業しました。そのためにいろいろ悩んだり、苦しんだこともありました。現在、臨床ではアクティベーター・メソッド・カイロプラクティック・テクニック(以下AMCT)とカイロプラクティック神経学を用いて検査を行い、治療はAMCTで行っています。これからAMCTを始められる先生方や、学生の方にとってもいろいろな不安や疑問があると思います。そのような方達にとってこのコラムの内容が少しでもお役に立てたら光栄です。また、勉強不足で至らないことも多々あると思いますが、のちほどご意見、ご指摘をいただけたら幸いです。

はじめは驚きの連続

私がAMCTに最初に出会ったのは大学5年の時でした。当時の私にはサブラクセーションは骨のズレだという概念しかなかったため、初めてアクティベータ・メソッドセミナーに参加した時は驚きの連続でした。今まで自分が信じてきたはずのモーションパルペーションの信頼性の低さ、我々は骨のズレを治療しているのではないという事、サブラクセーションで下肢の長さ、筋のトーンが大きく変わること、サブラクセーションを取り除くのにあたってはアクティベーター器具の刺激は非常に効果的だということなど、それまでの自分の考えとは大きくかけ離れている内容ばかりでした。

しかし、最初はどうしても今まで慣れ親しんだ、手での矯正を捨てることができませんでした。そんな折、カイロプラクティック神経学のセミナーを受講する機会がありました。そこでAMCTとカイロプラクティック神経学は非常に共通する点が多いことに気づきました。さらに今までの概念よりも合理的であり、患者・Drの負担も少なく、カイロプラクティックの自律神経系に対する効果にも自分なりに納得できる答えを得ることができました。以後毎回AMCTのセミナーに参加させて頂いています。

カイロプラクティックの位置づけ

いま、代替医療と呼ばれるカテゴリはかなりの数に膨れあがっています。私のオフィスの周りにも鍼灸、接骨院、指圧、整体、リフレクソロジー、足裏療法、リンパ療法、エネルギー療法など数えあげたらきりがありません。それぞれ独自の原理、治療法を持っており、治療法によって得意分野はありますが、それぞれ効果があるようです。

これらの治療法に共通したことは何でしょうか?それは、患者の体に何らかの刺激を加えることだと思います。われわれカイロプラクターも例外ではありません。特にカイロプラクティックは患者の関節にアジャストメントを加える(時には関節音を伴う)わけですから最も強烈な刺激の一つではないでしょうか。

このように書いてしまうと、カイロプラクティックも他の治療法も刺激を加えることに変わりはなく、違いはないように思われがちです。「患者に何らかの刺激を与え、それに対する患者の治癒反応を引き出す」ということについてはカイロプラクティックも共通していると思います。しかし、刺激を加える対象や目的、方法はそれぞれの治療法で異なっています。

カイロプラクティックではその対象はサブラクセーションであり、目的は骨、関節、筋、靭帯、硬膜、リンパなどそれぞれに存在するレセプターを通して神経反射を引き起こし、関節の力学的、解剖学的、生理学的機能を正常にすることです。方法は主にアジャストメントです。サブラクセーションという概念はカイロプラクティックを他の療法と決定的に区別しており、カイロプラクターはサブラクセーションを評価・分析し、治療するという信念を持っているから存在意義があるのだと思います。

独自の検査法をもつAMCT

先ほど述べたように代替医療が氾濫する現在において、カイロプラクターとしてカイロプラクティックと他の療法を区別し、「われわれカイロプラクターとは一体何者なのか」ということをいま一度自覚する必要があると思います。
私は、AMCTはサブラクセーションを評価・分析し、治療する上で、最も適したテクニックではないかと思います。その理由を以下にあげます挙げてみます。

独自の検査法(下肢長検査、アイソレーションテスト、ストレステスト、プレッシャーテスト)を持っている。そして下肢長検査においてその信頼度は良~優の評価を受けている。AMCTで行われる下肢長検査はサブラクセーションを「下肢の長さの違い」、「筋のトーンの違い」として視覚と感覚の両方で確認する事ができる。

ストレステストとプレッシャーテストを活用することによって、サブラクセーションを何回でも再現(確認)することができる。また、治療するにあたっても、本当にそこに治療すべきなのか、どこか見逃してる所はないかなどについても同様にストレステスト、プレッシャーテストを使って何度でも確認することができる。それにより治療が成功したかを判断、確認することができる。

治療の速効性があり、その場で症状が軽減、消失する。治療後、患者の症状は即座に軽減または消失することがほとんどなので、AMCTでの臨床に携わっていると、症状の改善はサブラクセーションを取り除いた結果であることを実感できる機会が多くある。

治療経過やサブラクセーションのパターンから患者にとって排除すべき要素(行動、姿勢など)や予防法を特定しやすい。AMCTで治療を行っていると、患者のサブラクセーションがなぜそこにあるのか、どうしたら再発を防止できるのかなど、治療だけでなく予防、再発防止の面からもサブラクセーションを追究することができる。

症例報告

今回ここにあげたのは日常我々のオフィスに来院する事の多い筋骨格系の主訴をもつ患者の症例です。学生や臨床経験の少ない方、これからAMCTを始めようと考えている先生方の参考になると思い、私自身の失敗や学んだ事などを、できるだけありのままを書かせていただきました。

症例1

■患者:
71才女性、無職。

■主訴:
両膝の痛み。

■病歴:
10数年前に転倒して右膝を打撲してから膝が痛い。また、その数年後より左の膝も痛くなりだした。整形外科で変形性膝関節症と診断され、湿布、マッサージ、電気治療を受けているが、改善がみられない。両膝とも内側が痛く、荷重がない状態では痛みはないが、歩行、階段の上り下り、坂道(特に下り)で憎悪する。

■視診:
立位でかなりの内反膝(足趾を平衡に保った状態、頚骨内側顆のレベルで約9cm)が確認された。また、その影響からか歩行時に体の左右の揺れが大きい。靴の外側の減り方が目立つ。

■その他の自覚症状:
鼻の病気(無臭症)、アレルギー

■バイタルサイン:
HR―80 BP R―144/88、L―142/88 RR 20

■オーソペディックテスト:
ニーアダクションー左右で痛みの誘発

■マクマレーテストー左内側半月板に痛みの誘発

■その他の検査:
酸素飽和濃度―右97、左97、

■盲点検査:
左>右

■<治療経過>
初診時の視診では両足ともに内反が大きく、左下肢は右下肢に比べかなりの短下肢(5cm)であった(解剖学的な下肢長には差が見られないので機能的短下肢と考えられる)。左PD、ポッシビリティ1で治療を開始し、両側膝外方の治療を行った時点で短下肢はかなり改善されたが(3cm)、その後脊柱のベーシック、膝のアドバンス治療後でも約2cmの下肢長差が見られた。歩行時の痛みは治療後すぐに改善された。
5回の治療で右膝の疼痛は80%改善されたが、左膝に関しては50%の改善、左下肢はやはり2cm近く短下肢が残っていた。患者にはリハビリのための運動を指導した。
6回目の治療時に再評価をするため全身をチェックしたところ、左股関節にかなりの可動性低下が確認されたため股関節の治療を加えた。また、治療後患者に歩行をさせた後で再検査をしたところ下肢長が元に戻ってしまったため、靴を新しい物に替えるよう指示した。
8回目の治療時の評価では両膝とも疼痛は80%改善され、内反膝も3cmにまで改善が見られたが、下り坂、階段を下りる時の痛みは残っていた。
10回目の治療より半月板の治療と大腿骨遠位端内側、頚骨近位端外側の治療を(保井D.Cの指導により)加えたところ、下り坂ではほとんど痛みはなく、歩行もスムーズになった。現在は週一回の治療を継続中である。

この症例では、治療初期には症状が膝ということから膝ばかりに目がいってしまい、それに影響を及ぼす股関節の治療を見逃していた。また、いくらサブラクセーションを治療したとしても、患者の日常生活でそれを悪化させる要素(外側がすり減った靴での歩行)が取り除かれない限りは症状が再発してしまうし、予防にはつながらないことを実感した。

症例2

■患者:
51才女性、パート勤務。

■主訴:
両肩から手にかけての痛み。

■病歴:
1年前からの両側肩から手にかけての痛みを訴えて来院。思い当たる原因はなく、重い物を持った後や朝起きがけに痛みが強い。重だるい痛みで、ひどい時には肩から手にかけて痛みが走る。また、7年ほど前から左手第4指の基節中節間関節に炎症が起き、3年程前から屈曲約20°にて癒着がおこり、現在はまったく動かす事ができない。1年ほど前からは左手第2指中節末節関節、右手中指の基節中節間関節にも同様の症状が現れている。血液検査で自己免疫疾患に関する陽性所見はなし。

■既往歴:
3年前、医者から甲状腺機能亢進と診断された。その後アイソトープ治療を受け、現在は甲状腺機能低下症の症状がある。

■その他の自覚症状:
便秘、アレルギー(花粉症)、耳鳴(両側)、手や足の筋肉がよく「つる」事がある。

■バイタルサイン:
HR―74 BP R―104/64、L―104/62 RR 20

■オーソペディックテスト:
サービカルコンプレッションテストー両側上肢への痛みの誘発

■その他の検査:
上肢のベースラインでは両側の振動覚の低下、左C6で触覚の低下がみられた。両側眼瞼下垂。

■盲点検査:
左>右、対光反射、両側疲労

■<治療経過>
初診時に右PD、ポッシビリティ1にて治療を開始。脊柱のベーシック治療を行った後、症状が上肢であることから胸椎、頚椎、上肢のアドバンス治療を行った。治療後サービカルコンプレッションテストは陰性を示し、触覚も改善された。
2回目の来院時に、初診の治療後2日間体の調子がおかしかったと訴えた。おそらく両側大脳の疲労が原因で初診時の刺激が強すぎたのか、あるいは治療によって中枢のバランスを崩してしまったためだと思われる。2回目からは頚椎の治療をリング1で行い、大脳の機能回復のために胸郭の治療、中枢補正のため左側のサブラクセーション(主に手関節、足関節)からの刺激を加えた。
5回の治療まで同様の治療を行ったところ、起床時の痛み、活動後の痛みも改善された。また、中枢の機能にも改善がみられ、耳鳴も消失した。現在は大脳機能のモニターと手指の可動性の維持を目的に週一回の治療を継続している。

この患者は、問診の時点で甲状腺機能亢進による糖尿病が疑われた。また、その症状が全身性のもので末梢神経に影響が現れている。血管の脆弱化、甲状腺機能亢進による骨粗鬆症が予想され、頚椎への通常の手によるアジャストメントではテクニックの変更を必要とする。しかしAMCTの矯正はほとんどか腹臥位で行われ、高速、低力、低振幅なためこのような患者にも安心して矯正が行えた。

おわりに

今回この原稿を書くにあたって、正直、失敗ばかりが目立つ症例でいいのかと迷いましたが、私の現状をありのまま報告させていただく事にしました。AMCTを始めて1年、はずかしながら未だに初診時の患者さんのPDの決定、ポッシビリティーの決定に苦労します。しかし、来院回数が増えてくると、その患者さんのサブラクセーションのパターンが見えてきて、さらに日常生活での改善点がわかるようになりますし、それと同時に自分の観察・評価の上達度が見えてくるようになります。

いま、AMCTに少しでも興味がある方は、ぜひAMCT公認のセミナーに参加されることをお勧めします。熱い情熱を持っている保井、須藤両DCが分かりやすく丁寧に指導してくれるはずです。そして必ず、何か心に残る物を得られると思います。

参考文献

●「アクティベータメソッド・カイロプラクティック・テクニック」A.Fuhr他著、保井志之他訳、エンタプライズ

●「カイロプラクティック・サブラクセ-ション」M.Gatterman原著、竹谷内宏明監訳 エンタプライズ

●「図解四肢と脊柱の診かた」STANLEY HOPPENFELD原著、野島元雄監訳 医歯薬出版株式会社

●「未来免疫学」安保徹著 インターメディカル

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